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教えてDr.

閉経と不眠

2018年05月09日

 女性の性周期は卵胞ホルモン(エストロゲン)と、黄体ホルモン(プロゲステロン)という二つの女性ホルモンによってコントロールされています。これらのホルモンは眠気の抑制や促進など睡眠中枢にも大きな影響を及ぼします。 40歳代後半から50歳代前半には月経が止まる方が多く、閉経が近づくと卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌が急激に減り、そのうち排卵も起こらなくなります。これが閉経です。 閉経するとFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)といった卵巣を刺激するホルモンがたくさん分泌されるようになります。卵巣からエストロゲンが出ない、もっと刺激しなければと脳はパニックになり、脳が過興奮の状態になり、自律神経にも乱れが生じるようになり、不眠などの更年期症状が現れます。

 更年期障害の患者さんは「ほてり・のぼせ」や「発汗」などの症状と同様、「入眠障害」や「中途覚醒」といった睡眠に関する症状も高頻度に出現することがわかっています。この睡眠障害とのぼせ・ほてりなどの身体症状は互いに作用し合うことが多く、身体症状が強いと睡眠障害も強くあらわれる傾向があり、逆に睡眠障害が改善すると身体症状もそれに伴って和らいでくることが多いようです。


睡眠をうまくとるために


① リラックスできる睡眠環境(寝室)を整えましょう。
 カーテンで外部の音や光を遮断したり、布団や寝具を清潔に保つなど、寝室を快適で心地よい空間に整えることも快適な睡眠につながります。

② 太陽の光を浴びましょう。
 睡眠・覚醒をつかさどるメラトニンというホルモンは光によって左右され、昼間の明るい時間帯にはほとんど分泌されませんが、夜の暗い時間帯に多く分泌されてよりよい睡眠をもたらす働きがあります。朝目覚めたときに朝日を見つめるとメラトニンが分泌されます。

③ ホルモン補充療法(HRT)を試してみませんか。
 女性の性周期は卵胞ホルモン(エストロゲン)と、黄体ホルモン(プロゲステロン)という二つの女性ホルモンによってコントロールされています。これらのホルモンを補充すると不眠が解消されます。副作用で不正出血や子宮内膜異常が起こることがあります。

④眠れるようになるサプリを試してみる。
 サプリメントでも睡眠効果を示すものがあります。これはHRTのように副作用(子宮内膜異常や不正性器出血など)がありません。イソフラボンを乳酸菌で処理したエクエルは子宮内膜増殖作用がなく長期間安全に服用できます。また、もともと体内にあるアミノ酸のグリシンも睡眠物質の一つです。これもサプリ(グリナ)として販売されています。

 更年期は一時的なもので永遠に続くわけではありません。症状が辛いときはあまり我慢せずに専門医を受診し、ホルモン補充療法などの治療を受けるようにしましょう。不眠などが解消され十分な睡眠がとれるようになると、更年期症状そのものが改善されていくことも多いようです。


更年期の不眠の原因とは?

 「脳には視床下部というところがあり、その下に下垂体というものがあります。視床下部はGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)というホルモンを出し、その刺激で下垂体からFSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体形成ホルモン)が分泌されます。このホルモンが卵巣の発育をコントロールしていて、卵巣からエストロゲンとプロゲステロンが分泌される仕組みになっています。卵巣には、これらの女性ホルモンの分泌量を脳にフィードバックする働きがあり、視床下部に女性ホルモンの調整指示を行わせています」

「ところが、閉経が近づくと卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌が急激に減り、そのうち排卵も起こらなくなります。これが閉経です。そうするとFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)といった卵巣を刺激するホルモンが異常に分泌されるようになります。卵巣からエストロゲンが出ない、もっと刺激しなければと脳はパニックになり、脳が過興奮の状態に。すると視床下部に中枢がある自律神経にも乱れが生じるようになり、不眠などの更年期症状が現れます」

不眠症のタイプ
・「入眠困難」…寝つきが悪い
・「途中覚醒」…夜中に何度も目が覚める
・「早朝覚醒」…朝早く目が覚める
・「熟睡困難」…眠りが浅く寝た気がしない

更年期の不眠は「入眠困難」と「途中覚醒」が多いと言われています。

更年期の不眠を改善させる方法
では、不眠を改善させるにはどのような方法があるのでしょうか?

① 体内時計を適切に働かせる

◆体内時計を適切に働かせるためには下記が重要になってきます。
・朝食をとる
・朝、明るい光を浴びる
・夜間にブルーライトを浴びないようにする
・寝る前のカフェインを避ける

② たんぱく質とビタミンB6を摂取する

睡眠ホルモンである「メラトニン」は、睡眠の質を高める働きがあり、体内時計が狂うと分泌がわるくなります。気持ちの切り替えに重要な脳内物質の「セロトニン」は寝入りや寝起きに重要で足りないと、布団に入ってもいろいろ考えを巡らせてしまって寝付けない。など寝つきが悪くなってしまします。そのため、セロトニン・メラトニンの原料であるたんぱく質と合成に必須なビタミンB6は睡眠にとって大切な栄養素となります。(※参考:メラトニンは海外ではサプリメントとして販売されています)

◆タンパク質を多く含む食材
・肉、魚、大豆製品、卵

◆ビタミンB6を多く含む食材
・ニンニク、マグロ、酒粕、レバー、カツオ、バナナなど

③ マグネシウムを摂取する
マグネシウムは神経を鎮める役割があります。それが足りていない人は神経が高ぶり易くなるので、マグネシウムは重要なミネラルです。

◆マグネシウムを多く含む食材
・豆類、海藻類、魚介類など

④ 寝るタイミングが大切
人は体温が上がって、下がってくるときに入眠しやすくなります。そのため、一度お風呂に入って体を温めてから体温が下がってくるタイミングで寝るのがいいでしょう。寝る1時間前くらいの入浴がおすすめです。

⑤ 適度な運動もよいが、運動する時間がポイント
運動も体温が上がります。しかし運動すると交感神経が優位になります。寝るときは副交感神経が優位になる状態なので、寝る直前の運動は避けたほうがいいでしょう。

⑥ ホルモンの補充
女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の補充によって、脳のパニックを鎮めることができるので、更年期の不眠にはホルモン補充が有効です。また、あまり知られていない事ですが、女性も男性ホルモンを副腎と卵巣から分泌していて、その分泌も更年期以降で減少していきますので、女性ホルモンの補充で睡眠改善が今ひとつという場合に、男性ホルモンの補充をすると、さらなる改善をみる場合があります。

更年期の不眠は長く続くの?

「更年期に入ってからホルモンが減少することによって、睡眠の質が落ちてきています。また、年齢を重ねるにつれて副腎機能も低下してきます。そのため、更年期が終わったからといって不眠が改善される可能性は低いです。男性ホルモンを投与すると、よく眠れるようになる事があります。また、女性ホルモン、男性ホルモンには脳の信号を受け取るシナプスを大きくする効果がわかっているため、信号が伝わりにくくなっている脳機能の改善も期待することができます」