温泉に行きたい妊婦さんが一番知りたいことは、温泉での入浴が妊娠を流産させたり、早産の原因にならないかということだと思います。温泉と妊娠の流早産に関する明らかな論文は見あたらないので、それに類する研究から推察して述べてみたいと思います。
温泉は泉質によって11種類に分類されて、それぞれについて効果効能が示されています。よく温泉の浴場の入り口に張ってある効能書きには「妊娠中、特に、妊娠初期と後期には入らないこと!」と書いてあることが多いように思えます。しかしながら、数日間の温泉旅行では家庭での入浴との差異はほとんどなく、温泉旅行は医学的には旅行して入浴することと同じだと思われます。
けれども、妊娠中は皮膚が少し敏感になります。妊娠掻痒症になったり湿疹ができやすいことがあります。従って、刺激の強い、硫黄泉・濃い食塩泉・放射能と関係のあるラジウム腺は避けた方がよいでしょう。また、あまり高温の温泉や、長い時間入るのは避けた方がよいと思います。(何度以上か?何分以上か?ということも含め、はっきりとした基準はありません。)
入浴により母児は様々な影響を受けます。適度な入浴には、心拍出量の増加、新陳代謝の亢進、血圧の軽度の低下、脱ストレス効果などがあります。たまに、軽度の子宮収縮を起こすことがありますが、陣痛を誘発する心配はないようです。
温泉旅行は、妊娠中に蓄積されている様々なストレスを開放させ、気分をリフレッシュさせる効用もあります。妊娠経過に異常が無く、流早産の傾向がない妊娠安定期の妊婦さんであれば、悪いことではないでしょう。安定期とはおおよそ妊娠16週以降を指していることが多いのですが、妊娠22週を過ぎても早産は約4%起こり、安定期でも慎重でなければならない妊婦さんもいます。
最後に、大事なことは一人での入浴は、転倒や気分不良時の対処が遅れることがあるので避けるようにした方がよいでしょう。