妊娠初期になんらかの原因で神経系の発育がうまく行かず、脊髄や脳神経の欠損が生じる事があります。これらを総称して、神経管欠損症と呼びます。
過去の報告では、神経系に何らかの欠損を持った子供の母親を調査したところ、血液中の栄養素や葉酸とビタミンB12が一般の母親に比べて、明らかに低い事がわかりました。さらに、これらの母親に一日400~800マイクログラムの葉酸を服用してもらったところ、次の分娩では、神経管欠損症の発生を防止する事ができました。
妊娠初期において神経管が正常に発育するためには、妊娠前あるいは、妊娠後数週間以内に、十分な葉酸やビタミン12を摂取する事が大事です。特に、以前に神経系に欠損を持った胎児を妊娠した事のある母親は、再発する率が高いので十分心がけてください。
現在の多くの妊婦は、計画的なものでない「できちゃった婚」が多く、また、妊娠している事に気づかずに、もっとも大切な葉酸の補充の時期を逸している場合があります。こんな時には、胎児はおそらく葉酸やビタミンB12不足の影響を受ける可能性があるでしょう。
このために、アメリカでは、穀類や小麦粉に葉酸を添付して、神経管欠損症の予防をしようとする試みが、まもなく開始される事になっています。このような方法は、日ごろから、妊娠初期の葉酸やビタミンB12の欠乏を防止する事ができ、最終的には、神経系の欠損症の予防につながるわけです。
それでは、どのような食事をとれば、葉酸やビタミンB12を摂取する事ができるのでしょうか?毎日の食卓で、緑黄野菜、果物、レバーなどの食べ物やきわめて新鮮なオレンジジュースなど、さらに、オートミールと牛乳などを積極的に取るように心がけましょう。また、最近では、葉酸を含むサプリメントがいろいろな会社からも発売されています。葉酸やビタミンB12は、食物からの摂取が原則ですが、適切な服用であれば問題はないでしょう。
最終的には、妊娠を計画している、あるいは妊娠する可能性のある女性は、少なくとも一日400マイクログラムの葉酸を摂取するべきであり、日常の食事からであろうと、各種の栄養食品からであろうと、特にこれから妊娠を希望する人や、妊娠初期の人は摂取すべきです。葉酸は、胎児の神経管の正常な発育を促進し、ビタミンB12は胎児の発達の助けとなります。