50歳くらいにかけて月経が不順になり、12ヶ月以上連続して月経がない時を閉経と言い、閉経の前後5年間を更年期と呼びます。日本人の閉経は、平均すると約50.5歳と言われていますので、45歳から55歳くらいまでを更年期と定義する事ができるでしょう。
この時期には、今ままでたっぷりと卵巣から放出されていた女性ホルモンがだんだんと減少することによって、いろいろな障害を起こす事があります。たとえば、血管運動性障害として、のぼせ、熱感、発汗亢進、寝汗、動悸。精神神経症状としては、不安、不眠、記憶力減退、物忘れ、頭痛。膣や粘膜の萎縮でおこる、性交障害、老人性膣炎、膀胱炎、頻尿、尿失禁。さらに皮膚障害として起こる、稀薄化、乾燥化、知覚異常、疼痛、しびれ。などがあるわけです。
● ホルモン補充療法-大切な事は骨粗しょう症と心筋梗塞の予防-
これらの症状の多くは、エストロゲンの減少に対して、体のほうが順応してくれば次第におさまりますが、影響はそれだけではありません。いちばん重要な事は、閉経後の骨粗しょう症と心血管系疾患のリスクの増大です。エストロゲンは、骨からカルシウムが溶け出すのを抑える作用をもっていますので、閉経後にカルシウム不足が続きますと、急激に骨がもろくなり骨折を起こしやすくなります。また、血管の伸展は悪くなり、コレステロール値の上昇のために心筋梗塞などの、心血管系疾患を起こす危険性が上昇してきます。それに対して、ホルモン補充療法で女性ホルモンを補えば骨粗しょう症と心筋梗塞の予防はもちろんの事、その他の更年期障害症状も、予防あるいは治療する事ができるわけです。
平均寿命自体が「人生50年」などといわれていたような昔の日本では、「更年期障害」自体が少なく、産婦人科医でもホルモン補充療法など思いつきさえしなかったことでしょう。現在、日本女性の平均寿命が84歳くらいですから、閉経後の20数年間をいかに快適に、楽しく、健康に過ごすかがポイントです。そのためにも、不足しているエストロゲンを補う「ホルモン補充療法」を受ける事によって、より質の高い人生を送れるよう根本的に発想を変えることが必要でしょう。エストロゲン単独での治療よりも、プロゲステロンと一緒の服用がより望ましいことが明となっています。産婦人科主治医にご相談ください。