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骨粗しょう症の新しい治療薬剤「ビスフォスフォネート」

  骨粗しょう症とは、卵巣から分泌されていたエストロゲンという女性ホルモンが、閉経して減少した結果、骨密度の低下をおこし骨がスカスカになってしまう状態をいいます。

  この骨粗しょう症が原因となって骨折がおこり、寝たきり老人になったりしないために、現在では予防や治療として各種の薬剤があります。整形外科の先生方は骨折の予防という立場から、婦人科の先生方はホルモン補充療法の延長として骨粗しょう症の治療にあたっています。この立場の違いから、産婦人科医は整形外科の先生が使っている、カルシトニンという薬やビタミンD3の副作用には詳しくなく、逆に、整形外科の先生は婦人科の先生が使っているホルモン剤の副作用に関しては不慣れなために、それぞれ使用したがらないのが現状です。(特にホルモン補充療法での副作用の子宮からの出血に関して、整形外科では対応のしようがありません。)

  婦人科医が積極的に使っているホルモン補充療法のエストロゲンは、骨量を増やす事は分かっていますが、骨折を減らすというデータは、まだ明らかではありません。また、整形外科医が使うカルシトニンは、骨粗しょう症の痛みを減らす効果はあります。しかしながら、整形外科でよく使用されるビタミンD3が骨折を減らすというデータもありません。

  最近、確実に骨量をふやし骨折を予防する薬剤のビスフォスフォネートが登場しました。この薬剤は、複数の大規模な調査によって、骨折の予防効果が確認された唯一の薬で、日本でも、今年の8月から9月にかけて2品目が認可され保険適応になりました。この薬剤の作用機序はエストロゲンと同じように骨の吸収を阻害する事で骨量を増やすように働きます。この薬剤を服用するといったん骨の成分として取り込まれますが、骨吸収の過程でビスフォスフォネートを吸収した破骨細胞に細胞死がおき、この結果、骨吸収が阻害されます。

  服用の仕方にはいくつもの注意点があります。食べ物や牛乳と一緒に飲まない。コップいっぱいの水で飲む。薬をかまない。立った状態でのみ、服用後30分は横にならない。これらがわずらわしいのですが、あまり神経質になる必要はなさそうです。

  婦人科としては、今後はホルモン補充療法の効果を骨折予防以外にも期待したいので、エストロゲンとビスフォスフォネートを中心とした治療法が、標準的になると思われます。今後の骨粗しょう症の新しい治療に期待できそうです。

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