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妊娠反応検査薬が陽性だった時に知っておくべき重要な事柄

  最近では、月経が遅れたときに妊娠かどうかを判定する検査薬が薬局で簡単に手に入ります。数分の尿検査で容易に判定できますが、詳しい説明書が同封されているものの、いまひとつわかりにくいのも事実です。また、分からないからと言って、友人や家族にも尋ねにくい事柄です。さて、この妊娠反応検査はいったいどんな仕組みになっているのでしょうか?

  妊娠は、受精卵が卵管という管を通り子宮の内膜に根付くことで始まります。これを着床と呼びます。そして将来、赤ちゃんと母体との栄養や老廃物を交換する、胎盤と言う組織のもとになる絨毛(じゅうもう)が発生してきます。この絨毛はヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)と言う性腺(卵巣や精巣)を刺激するホルモンを産生します。妊娠検査薬は、尿中に排出されるこのヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)を測っているわけです。

  ここで気をつけなければならない事は、妊娠検査薬の感度によって陽性が出る時期が違うことです。hCG検査薬は代表的には0.2単位、25単位、50単位、200単位などのいろいろなレベルのものがあり、それぞれの病院・産院でどのレベルの検査を使うかによって陽性に出る時期が違います。たとえば、市販の検査薬(25単位)では陽性だったのに、受診した産婦人科医院での検査(50単位)では陰性などということが起こりえます。

  また、さらに重要な事ですが、妊娠反応が陽性に出たからと言って、分娩まで全員がうまく行くわけではありません。たとえば、hCG50単位が陽性に出たヒトのうち、分娩までうまく行く割合は、全体の約30%です。残りの70%近くは流産してしまうのです。この70%のうち流産症状が明らかなヒトは10%にすぎず、残りの60%の人たちは、本人の自覚症状もないままに流産してしまっているのです。事実、1週間前には確かに陽性だった妊娠反応が、流産症状はないのに陰性になってしまう事も起こるのです。そのため、これらを前臨床的妊娠(妊娠と言う臨床症状が起こる以前の妊娠)とか化学的妊娠(化学反応でhCGが検出されるだけの妊娠)とか呼んでいます。

  最後に、妊娠反応が陽性に出るのは、正常な妊娠だけでなく、流産や子宮外妊娠、hCG産生腫瘍、さらには胎盤を原料とした漢方薬の服用者など、正常妊娠以外でも陽性を示すことがあります。また、あまりにhCG濃度が高すぎる時には、偽陰性を示す事もあります。

  妊娠検査薬で陽性が出たら、必ず産婦人科を受診して、本当に子宮の中の妊娠かどうかを超音波検査で確認してもらいましょう。詳しくはお近くの産婦人科医にご相談ください。

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