妊婦健診での検査項目は、全てが法律で決まっているわけではありません。母子手帳に記載されるべき項目のみの検査で済ます産婦人科もあれば、エイズ検査や成人T細胞白血病、不規則抗体価(タイプ&スクリーニング)まで調べる産婦人科もあり、地域性や病院の規模によっても異なります。
一般的に母子手帳に記載されるべき検査では血液型、梅毒検査、B型肝炎であり、これに加えて貧血の検査までは、ほとんどの産婦人科で実施しています。
しかし、これだけでは、不十分です。時代とともに変化してきている性風俗や地域性も考えて、うしじまクリニックでは以下の検査を全ての妊婦さんに行っています。
① 腟分泌物検査と子宮頸部細胞診(子宮癌検診):腟にいるGBSという細菌がいると、その感染で生まれた赤ちゃんが死亡する事があります。子宮頸癌合併妊娠が増えてきています。子宮をとることなくレーザーメスでの治療が可能です。
② 風疹、トキソプラズマ、糖尿病、(サイトメガロウイルス):先天性の奇形を発症する可能性のある疾患です。できるだけ妊娠初期に検査を受けましょう。
③ C型肝炎、肝機能:将来的に肝疾患を起こす事があります。
④ エイズ検査、クラミジア頚管炎:性感染症です。エイズに関しては、抗ウイルス剤の投与や帝王切開で感染を1%以下に抑える事ができます。
⑤ 成人T細胞白血病:特に九州地方に多い疾患です。母乳を制限する事で赤ちゃんへの感染を予防できます。
⑥ タイプ&スクリーニング(不規則抗体価):分娩や手術時の大量出血時に交差適合試験を省略して輸血するまでにかかる時間を短縮できます。(日本で実行している施設は約25%)
⑦ 胎児胎盤機能検査:NST、超音波検査(カラードップラー、3D超音波検査)hPL、エストリオール:胎児の元気さを確認する検査です3D超音波検査では外表奇形が分かる事があります。
以前に比べると多くの有効な検査が発達してきていますので、どんどんと取り入れていっています。また、生まれたばかりの赤ちゃんの元気さが臍の緒の血液で分かる「臍帯血ガス分析検査」と「新生児の聴覚スクリーニング検査」は、全ての赤ちゃんに対して無料で行っています。
妊婦健診での検査は新しい命のスタートに関る大変重要な検査です。できる限りたくさんの情報を集めるためにも、検査の意義とその対応に関して十分に理解しておきましょう。疑問があれば、時間をかけてゆっくりと説明してもらえる主治医を選びましょう。