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さかご(骨盤位)の経腟分娩は危険です。


  正 期産(妊娠37週0日から妊娠41週6日までの分娩)での骨盤位(さかご)の分娩に関しては、経腟分娩を試みる事が一般的でしたが、2001年12月に米 国産科婦人科学会が「正期産骨盤位は経腟分娩を試みることなく、予定帝王切開にするべきである。」との勧告を出しました。さかごは経腟分娩と予定帝王切開 とどちらが望ましい分娩方法なのでしょうか?

  1990年代は米国において、さかごの帝王切開率は著しく上昇し1999年の帝切率は 85%を示しています。この事実は、さかごの経腟分娩に慣れている臨床産科医が年々少なくなってきており、研修医やレジデントに教育できる技術や経験をつ んだ産科医が絶対的に不足している事を示しています。また、経験や技術の不足の経腟分娩で医療過誤が起こっているであろう事も容易に推察できます。

  さ らに、最近、正期産のさかご分娩の取り扱いを検討するために、予定帝王切開と経腟分娩を比較した大規模な国際的臨床試験が実施されました。そして、予定帝 王切開では経腟分娩と比較して、周産期死亡率、新生児死亡率、重篤な新生児後遺症の発生率が低くなる事が確認されました。しかしながら、その一方で妊産婦 死亡、術後後遺症には差がありませんでした。

  この臨床試験の結果で最も注目すべき点は、周産期死亡率の低い先進国においても、さかご の予定帝王切開の実施は、さらにリスクを下げるという事実です。今まで科学的、疫学的な裏付けがないままに経験と勘で施行されていた骨盤位の経腟分娩は、 もはや適切な選択とは言えません。

  正期産の時期をむかえても、さかごのまま胎位が変わらない場合には、予定帝王切開手術をするのが赤ちゃんのためにも望ましい、新しい常識となりそうです。

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