コレステロールの正常値はどう言う方法で決められているのでしょう。一般的に血液・生化学的検査などの正常値は健康な人たちから統計的に出された値や、健康に過ごすための目標値を設定する方法で決められています。コレステロールに関しては、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患を減らす目標値とされています。最近の日本の正常値は220~240mg/dlです。
日本人男性の狭心症や心筋梗塞の頻度は欧米の男性に比べると数分の一であり、さらに日本の女性の場合は日本人男性の数分の一でしかありません。それにもかかわらず、日本の基準値は欧米の基準値に比べて20mg/dlも低く設定されています。もし、欧米の基準を用いると高コレステロールの患者さんは今の数分の一に減少することになります。しかも、女性ホルモンはいわゆる善玉コレステロールのHDLをあげる作用があり、元々女性の方が10~20mg/dlほどHDLが高いので高コレステロールと診断されてしまうことがある為です。
それでは、閉経前の女性の場合、コレステロールを下げると本当に狭心症や心筋梗塞は減少するのでしょうか?現時点では、女性の心筋梗塞や狭心症自体が男性と比べると少なく、閉経前の女性はさらに少ないので更年期以前のコレステロールを下げた事による医学的な利益は明らかではありません。
結論として、閉経前の女性はコレステローリ値を気にすることはありません。それよりも注意しなければならないのは、狭心症や心筋梗塞の原因となるたばこ、糖尿病、高血圧の三つです。若い女性は、まず禁煙を実行しましょう。そして、40歳をすぎたら糖尿病や高血圧にならない健康な生活習慣こそが重要です。