この数年で、立体的な表示(3D)が可能な3D超音波検査が一般の産婦人科でも普及してきいました。とは言うものの3D機能だけの超音波検査は静止画しか表示できず、スキャンにかかる時間も長いものでした。これに比べてごく最近では、3D立体画像が短時間のスキャンで可能であり、その立体画像をリアルタイムでの動きとして観察できる最新鋭の3D/4D超音波検査が普及し始めました。
一般的な2次元の超音波検査装置(いわゆる白黒の超音波検査)では、知識と経験を積んだ医師しかわからなかったような情報を、3D/4D超音波検査では特別な知識をがなくても、妊婦さんと共有することが可能となりました。それでは、今までの2次元超音波検査に比べて何がよりわかるようになったのでしょうか?
今までの妊娠の診断は、経腟超音波検査によって狭い空間プローブ(超音波検査機器)を使用しなければならなかったため、診断や計測に適した画像が得られるとは限りませんでしたが、胎嚢(胎児が発生してくる子宮内の袋)の位置の確認や頭臀長(胎児の頭からおしりまでの長さ:発育の目安になります)などの計測に適した画面を得ることが簡単になり、より正確な計測ができるようになりました。立体画像により胎児全体像の把握と形態異常(奇形などによる形の異常)の診断もよく分かるようになりました。また、多胎妊娠(双子や三つ子)での胎児の形態や胎盤の位置関係の把握も今までより厳密にできるようになりました。
妊娠の中期、後期の有用性について考えてみましょう。胎児の形態異常のほとんどは今までの断層法で診断することができます。しかしながら3次元的に複雑な形をしている部分の異常は把握しにくかったり、見逃されやすかったりしていました。3D/4D超音波検査では動画で観察できるので、特に顔や四肢さらに骨格の形態異常の発見に有用です。さらに、将来的には胎児の予測体重がより正確に算出できることになるでしょう。
けれども、3D/4D超音波検査を導入してから、一番効果が上がったと感じることは妊婦健診に一緒に来る父親がとても増えてきたことでしょう。男親は、妊娠中には親としての実感がなかなかわかないものですが、動いている胎児を見ることで父性の早期の確立、そして母性のさらなる確立にも貢献していることには間違いないでしょう。
最後に、先日、この春に上海から里帰り分娩を希望されているお母さんからのメールをいただきました。上海の産婦人科でも3D/4D超音波検査は行われていることを知り、驚きました。つまり、3D/4D超音波検査は日本だけではなく、世界中で父性や母性の早期確立に貢献しているということが言えるでしょう