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本当に子宮癌検診は2年に一度でいいのか?

地方自治体は再考を!

 現在では、2年に一度の子宮癌検診は2年前までは、年に一度行われてきました。これは、子宮頸癌のなかで一番多い扁平上皮癌が前癌状態から癌に進行するのには、少なくとも6ヶ月は必要であるという事実に基づいています。1年に一度の子宮頸癌検診で、前癌状態や初期の癌で見つかり、簡単な手術で根治してしまう症例も多いのです。特に最近のレーザーメスや超音波メスによる手術は時間も短く出血量も少ないために、多くの産婦人科病院で日帰りで行われるようになりました。

 子宮頸癌は性行為感染症(性病)です。ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の性行為での感染によっておこる事が分かっています。早い性交経験、多数のセックスパートナー、多い妊娠分娩回数は子宮頸癌になりやすいのです。性交渉開始の低年齢化とコンドームを使用しない無防備なセックスの為か、20歳代での進行癌症例(手術が不可能な進行した症例)も散見するようになりました。

 また、子宮頸癌に関する最新トピックスとしては、子宮頸部腺癌と言うタイプの癌が増えてきていることです。このタイプは、扁平上皮癌の癌検診での正診率が95%と高いのに比べて70%程度と低く、内向性に発育するためになかなか初期での診断が難しい癌です。世界的に増加傾向にあり、扁平上皮癌と同じく、HPVの性交渉による感染が原因と推察されています。進行してしまってから見つかるとその後の経過が思わしくなく、数々の治療も効果が得られないことがあります。

 以上のことをふまえて考えても、行政が言うような「子宮癌検診は2年に一度でかまわない。」と言う医学的な根拠はありません。また、行政が根拠としている「2年に一度論」のデータは、子宮癌検診の受診率が80%と高い値を示している国のものであって、日本のように受診率20%程度の国には当てはまりません。子宮癌検診の機会を減らすことによって、子宮頸部腺癌のようなタイプは進行した状態でしか発見できなるのではないでしょうか。そしてそのことが、将来的に医療財政を圧迫することになるのではないかと危惧します。行政機関は目先のコストダウンよりも、もっと広い視野で国民の健康や医療財政を考えてほしいものです。

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