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教えてDr.

婦人科腫瘍学会のHPより 前熊本大学産婦人科教授 片渕秀隆先生のまとめられた わかりやすいHPVワクチンQ&Aです。

2022年03月04日

令和3年11月12日の厚生労働省の審議会において、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンが12~16歳の女子に国として接種をお勧めすることが再開されることになりました。今後、日本国内でHPVワクチンが益々接種されることを祈念しております。このたび本会では、HPVワクチン接種に関する「よくあるご質問」をQ&Aとしてまとめましたので、皆様のご判断の一助になれば幸いです。  


はじめに

子宮頸がんはそのほぼすべてが、ヒトパピローマウイルス(HPVと言います)の感染が原因であることが知られています。HPVには多くの「型」がありますが、そのうちがんと関係のある型は13~14種類です。HPVは子宮頸がんだけでなく、男性に多い咽頭がん、口腔がん、陰茎がん、肛門がんや、女性の外陰がん、腟がんにも関係があることがわかっています。この中で、がんとの関係が最も深いのがHPV16型、18型であり、HPVワクチンはこの16型と18型の感染を予防できるワクチンです。HPVワクチンは、当初子宮頸がんワクチンと呼ばれていましたが、実は子宮頸がんに限らず多くのがんを予防できるものなのです。
現在使われているHPVワクチンには、2価、4価、9価の3つがあり、それぞれHPVの2種類、4種類、9種類の型に対応しています。2価ワクチンはHPV16型、18型に対して、4価ワクチンはこれに加えて性感染症の尖圭コンジローマの原因であるHPV6型、11型に対して、さらに9価ワクチンでは4価ワクチンに加えてがんと関係する5種類のHPVに対する感染予防効果があります(Q6参照)。
日本では、平成25年4月からHPVワクチンは定期接種ワクチンとして、12~16歳の女子に対して接種を受けるよう推奨されており、この年齢であれば無料で接種を受けられるようになっています。ただし、定期接種ワクチンとして認められているのは、2価、4価ワクチンのみです。

Q1. 現在、HPVワクチン接種を受けることはできるのですか?

できます。HPVワクチンは、平成25年4月から定期接種ワクチン(決められた年齢では無料で接種を受けることができるもの)となっており、ご希望があれば医療機関で接種を受けることができます。12~16歳の女子であれば、3回の接種はすべて無料です。しかし、平成25年に厚生労働省の通知により、HPVワクチンの積極的勧奨を差し控える(ワクチン接種をお勧めしない)ことになりました。その後、HPVワクチンの有効性と安全性が証明されたこと、接種体制の整備が行われたことから、令和3年11月12日の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会において、この平成25年の勧奨差し控えの通知を「終了させる」ことが決定されました1)。
これによって、HPVワクチンは、定期接種ワクチンであるとともに12~16歳の女子に国として接種をお勧めすることが再開されることになります。さらに令和4年4月からは、12~16歳の女子に個別に通知してワクチン接種を促すことになりました2)。また、平成25年から8年間ワクチン接種の勧奨を差し控えしていたために接種できなかった女性に公費で接種する(キャッチアップ接種といいます)ことを厚生労働省が検討しています※。
なお、海外では男子への定期接種を開始している国もありますが、日本では男子はまだ対象になっていません。今後、男子への定期接種が導入されることを期待しています。

※令和3年12月23日開催の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会において、接種の勧奨差し控えのために定期接種を受けられなかった9学年(平成9年から平成17年生まれ)の女性に対してのキャッチアップ接種が無料で実施されることが決まりました。対象となる女性には、令和4年4月から順次、行政から個別通知が発送されます。
なお、今のところキャッチアップ接種は3年間の限定になる可能性がありますので、対象となる女性は早めの接種をご検討ください。(令和3年12月24日追記)

Q2. HPVワクチンの定期接種はなぜ小学校6年生から高校1年生(12~16歳)までなのですか?

ワクチンは感染を受ける前に接種しなければ意味がありません。子宮頸がんを引き起こすHPVは性交渉(セックス)によって女性の子宮頸部まで入ってきます。日本人女性を対象にした研究で、HPV16型、18型感染の予防効果は、初回性交渉の前にHPVワクチンの接種を受けた人では、約94%であることが報告されています3)。また、スウェーデンからの報告でも、子宮頸がん発症の予防効果は、17歳未満でワクチン接種を受けることでより高くなることが分かっています(子宮頸がん発症が88%の減少)4)。
もう一つ考えなければいけないのが、ワクチンの効果がどのくらい持続するかということです。効果が持続する期間はワクチンの種類によって異なる可能性がありますが、これまでの報告では4価HPVワクチンで最長14年間持続するとされています5)。この期間には個人差もあり、この年数を越えたら必ず効果がなくなるというわけではありません。
12~16歳で接種を受けると、26~30歳まではワクチンの効果が持続すると考えられるため、この年齢を対象に定期接種が行われています。思春期に入り月経(生理)が始まるこの時期に、子宮頸がんの予防への理解を深める教育も必要です。

Q3. がんを予防する効果は証明されているのですか?

証明されています。2018年、フィンランドから、臨床試験に登録されたHPVワクチン接種者と非接種者の追跡調査で、その後に非接種群では子宮頸がん・外陰がん・口腔咽頭がんといったHPVと関係の深いがんが、それぞれ 1年当り10万人に対して6.4人、0.8人、0.8人で発症したのに対し、接種群ではこれらのがんは全く認められなかったことが報告されました6)。2020年、スウェーデンの女性 1,672,983人の調査では、30歳までに子宮頸がんにかかった人の総数が、4価HPVワクチン接種者では63%減少し、特に17歳未満での接種者では88%減少することが明らかになりました4)。その後、デンマークやイギリスからも同じような結果が報告されています7)8)。このように、HPVワクチンによる子宮頸がんの予防効果は明らかになっています。

Q4. 日本国内では、HPVワクチンの有効性は証明されているのですか?

証明されています。日本でもすでに様々な報告がされていて、HPV16型、18型に対する感染予防効果が示されており、さらに2価HPVワクチン接種によって、HPV31型、45型、52型(子宮頸がんの原因となる可能性のあるHPV型です)に対しても感染を予防する効果のあることが報告されています3)。さらに子宮頸がんの前がん病変である中等度異形成(CIN2)以上の病変が減少し、治療を必要とする高度異形成(CIN3)以上の病変の減少も認められています9)。現在も、スウェーデンからの報告のように、がんの減少効果を証明するための大規模な調査・研究が日本でも続けられています。

Q5. ワクチン接種による副反応としてどのようなことを考えておくと良いですか?
   もし、そのような症状があった時にはどうしたら良いですか?

HPVワクチン接種後の女子に見られた広範な慢性の体の痛みや運動障害を中心とする様々な症状がメディアで繰り返し報道されました。その後の調査により、HPVワクチンそのものが原因となった可能性は否定的と考えられ10)11)、また、これまでに報告されている重い症状がすべて副反応であると仮定しても、その確率はHPVワクチンを1万回接種した場合に1件以下の頻度であり、極めてまれと言えます12)。
ただし、これらの症状がすべて副反応である可能性が否定されたわけではなく、接種に伴う痛みや接種前後のストレスが、このような症状を引き起こすきっかけになることもあると考えられています。接種後に心配な症状がある場合には、まず、接種を受けた医療機関を受診してください。各都道府県には、HPVワクチン接種後に発生した症状について適切な診療を提供する協力医療機関が少なくとも1つ選定されていますので、必要に応じて紹介を受け、受診してください12)。

Q6. 2価、4価HPVワクチン接種を受けた後に9価HPVワクチンを追加することはできますか?

できます。日本で承認されているHPVワクチンは2価と4価と9価の3種類です。9価ワクチンは2価・4価ワクチンに加えHPV31型・33型・45型・52型・58 型も加えた9つの型に対するワクチンです。2価・4価ワクチンにより60~70%、9価ワクチンにより約90%の子宮頸がんを予防できると考えられています13)。定期接種としては2価・4価ワクチンのみが使用されており、この2つを混合することはできません。これらの接種が終了した後に、9価ワクチンを追加することはできますが、接種の費用は全額自己負担となります。
現在、日本では小学校6年生から高校1年生の女子を対象に2価・4価のワクチンが定期接種として認められていますが、2価ワクチンについては出荷調整が行われており、初回に接種する場合は4価ワクチンが使われます。
さらに、4価ワクチンは9歳以上の男子でも接種を受けることが承認され、9価ワクチンは9歳以上の女子の接種が承認されています。ただし、これらの接種も全額自己負担となります。

Q7. 定期接種以外の年齢でワクチン接種を受けることはできますか?
   その効果はどうですか? また、何歳まで接種を受けることができますか?

できます。HPVワクチン接種を定期接種の対象年齢(12~16歳)で受けることができなかった人でも、その後にワクチンを接種することによって一定の効果が得られると報告されています。Q3にあるスウェーデンからの報告では、17歳以前に接種を受けた女性では88%の子宮頸がんの減少、17~30 歳で接種を受けた女性でも53%の減少を認めていました。17~30 歳では17歳以前に比べれば効果は低いものの、有効であると認められます。ワクチンの使用についての添付文書では、接種年齢の上限は書かれていませんが、海外の報告では、45歳までの接種はHPVワクチンの効果が認められており14)、アメリカでは女性に対して26歳までの接種を推奨しています15)。
なお、ワクチンの効果というのは、ワクチン接種を受けなかった女性と比べて、接種を受けた女性では前がん病変である中等度異形成(CIN2)以上の発生が減少したという意味です。ワクチン接種はHPV感染の治療にはなりません。ワクチン接種以前にHPVに感染してしまっている場合(性交渉をしている場合)は、異形成などが発生する可能性があります。

Q8. 子宮頸がん検診で異常があった場合や、子宮頸部円錐切除術やレーザー蒸散術※を受けた後で、HPVワクチン接種を受けるのは、その後の病気の再発を予防する効果がありますか?

子宮頸部円錐切除術・・・子宮頸がんの前がん病変(高度異形成、CIN3)に対して、病変のある子宮頸部を円錐形に切除する手術方法のことで、治療を兼ねた精密検査としてもっとも一般的な手術です。
レーザー蒸散術・・・子宮頸部の病変を切除するのではなく、レーザー光で病変を蒸散する(焼き飛ばす)手術方法のことです。

効果があるとは言えません。子宮頸がん検診で異常があった女性がHPVワクチン接種を受けた場合、接種を受けなかった女性と比べ、前がん病変が減少するかどうかは明らかではありません。がん検診で異常がある女性は、既にHPVに感染していることになります。HPVワクチンにはHPV感染を治療する効果はありません。その後の新しい感染を予防できたとしても、既にある感染によって前がん病変になる可能性があるからです。これから感染するHPVを予防することよりも、既にあるHPV感染や異常について定期的な検査や必要な治療を受けていきましょう。
子宮頸がんの前がん病変である高度異形成(CIN3)に対して、子宮頸部円錐切除術を受けると、ほとんどが治ります17)。その後にまた同じ状態になる可能性(CIN3の再発)は1~2%しかありません。原因となるHPVは手術後も腟内の感染は続いていると考えられますが、そのHPV感染をワクチン接種によって抑えることはできません。円錐切除術を受けていれば、その後がんに進行するリスクはほとんどなく、術後にHPVワクチン接種を受けても子宮頸がんの発生はそれ以上減少しないと考えられます。

Q9. HPVワクチンを接種するかどうか判断するのに、HPV検査をうける必要はありますか?

HPV検査を受ける必要はありません。HPV検査が陰性だった場合、高リスクHPVに感染していない状態であるか、感染しているがウイルス増殖を抑えている(潜伏)状態であるのか区別できません。しかし、性交渉(セックス)の経験がある女性のほとんどはHPVに感染したことがあると言われています18)。性交渉の経験のある女性では年齢が高くなるほど、HPV検査が陰性であっても実は潜伏感染していると言われています。中でもHPV16型や18型に感染したことがある女性では、ウイルスが体内に潜伏している可能性があるため、HPVワクチンの効果は期待できません。一方、HPV検査が陽性であっても、感染したHPVが16型、18型以外であれば、感染していない女性と同じようにワクチンの効果が期待できます。
HPVワクチン接種を受けるためにHPV検査をするという方法は一般的ではありませんし、世界的にも推奨されていません。逆に、HPV検査の結果や性交渉の経験の有無にかかわらず、26歳までの女性はHPVワクチン接種を受けたほうが、明らかに前がん病変の発生が減少することが証明されています。検査よりも年齢が1つの目安と言えます。

Q10. 新型コロナウイルスワクチンの接種との関係はどうですか?

新型コロナウイルスワクチンは、まだ新しいワクチンですので、他のワクチンとの接種との関係については厳密なルールやデータはありません。HPVワクチンと新型コロナウイルスワクチンの両方の接種を短期間のうちに受けると、副反応が出現した際にどちらのワクチンによる症状かが判断できなくなります。そのためどちらのワクチンが先であっても2週間は間隔をあけて他のワクチン接種を受けるように勧告されています。
新型コロナウイルスワクチンについては3回目の接種が推奨されています。HPVワクチンと新型コロナウイルスワクチンのどちらを優先させるかは、新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら担当の先生とご相談なさってください。