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子宮内膜症と卵巣癌

-第1回熊本エンドメトリオーシス研究会から-

 子宮内膜症とは本来子宮の内腔にあるべき内膜組織が卵巣や、子宮筋層の中、あるいは腹膜表面などに存在し、そこで月経が起こる良性疾患の一つです。卵巣に起こる子宮内膜症では卵巣内にホットチョコレート様の月経血の貯留が起こりチョコレーと嚢腫と呼ばれる卵巣の腫れを造る事があります。

 この子宮内膜症はたくさんの子供を産んでいた昔にはなかった疾患です。つまり月経がない期間が長ければ長いほど(妊娠していた回数が多いほど)、子宮内膜症にはなりにくかったのです。しかし、現代では結婚する人たちが減少し、高齢での結婚、妊娠のために子宮内膜症が増加しているようです。最近、この増加してきた子宮内膜症のチョコレート嚢腫が癌になることが報告されるようになってきました。

 悪性化が話題となってきたのは最近ですが、今までのチョコレート嚢腫の外来管理は臨床的な症状(月経痛や腰痛や過多月経など)がなければ、検査などすることなく漫然と投薬のみを続けていく傾向にありました。しかし今後は悪性化するチョコレート嚢腫が、0.7%程度あるという事です。これは一般の女性に比較して23倍も癌になりやすい事になります。

今後は40才を過ぎて4cm以上の大きさの嚢腫がある症例や急激に大きくなるチョコレート嚢腫では漫然と薬の投与だけすることなく、は厳重な観察、精査が重要だと言うことです。

今回は、平成21年5月8日に開催された「第1回熊本エンドメトリオーシス研究会」での京都大学教授 小西郁生 先生のお話を元にまとめてみました。

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