-カンガル-ケアとは何ですか?
1970年代にコロンビアで低出生体重児に対する保育器不足対策として始められた手技。母親の乳房の間に新生児を抱いて裸の皮膚と皮膚を接触させながら保育する方法。1980年代は欧米で、日本でも1990年代よりNICU(新生児集中医療施設)で実施されるようになりました。最近では大きな病院のほかに助産所や産科のクリニック急速に広がっています。
-カンガル-ケアの利点は
呼吸が規則的になり安定する。赤ちゃんお眠りが深くなり起きているときも穏やかである。免疫力が高まり感染予防になる。母乳哺育の促進になる。母子関係が深まることで育児に自信を持ち楽しむ余裕が生まれる。などがあげられていますが、生後直後の母子接触によりその後の母子関係が築かれるかどうかの評価は難しいとの意見もあります。安全性については早産児未熟児ともに系統的な検討はされていないということです(日本産婦人科医会報2007年.1月号)。
-カンガル-ケアでの最近の事故について教えてください。
正期産の成熟児でもカンガル-ケア中に呼吸停止が起こり、心肺蘇生で救命できた症例報告やごく最近では、心肺蘇生が間に合わず脳性麻痺になった赤ちゃんの例があります。
現時点ではカンガル-ケアがその原因かどうかははっきりしていません。
-カンガル-ケアお事故から学べること
カンガル-ケア中に起こった脳性麻痺の事故のことを知って、いくつかの昔の産科のブームを思い出しました。30年ほど前には座位分娩という分娩法がはやりましたが、分娩時の出血量が多くなることが分かり今ではなくなりました。その次はうつぶせ寝保育がはやりましたが、乳児突然死が起こりやすいことが分かり今ではなくなりました。そしてLDR(分娩と産後を同じ部屋で過ごす方法)がはやりましたが、今ではあまり声高には聞こえてきません。最近フリ-スタイル分娩がはやりつつありますが、分娩時に胎児心拍モニタリング(赤ちゃんの元気さ)がしにくいという事実はあります。
このように産科には、はやりすたりがあるのは事実です。新しい方法論に対しては、助産師や医師におまかせのお産ではなく、妊婦さんご自身が十分に理解した上で臨むことあるいは断ることが大事です。