妊娠中に気分が悪くなる事はしばしばですが、治療の必要のない生理的な状態から治療しなければならない病気までいろいろです。よくある妊娠中の気分不良の原因についてまとめてみました。
-妊娠中の気分不良について
つわりとは、妊娠したお母さんの80%に起こる生理的な変化です。原因は明らかになってはいませんが、胎盤の源になる絨毛から出るホルモンなどが関係して いると推察されています。適切な輸液などで軽減できます。つわりは必ず止まりますから心配はいりません。つわりがひどくなって体液のバランスまで壊れ、治 療が必要な状態を妊娠悪阻(おそ)と呼びます。食事を全くとることができずにエネルギー源として脂肪を使うようになると、ケトン体という物質ができると電 解質の異常まで起こすこともあります。。
同じころ、目の前が真っ暗になり倒れたりすること事がよくあります。これは脳貧血のためです。妊婦さん は脳貧血を起こしやすくなっています。絨毛から分泌されるホルモンにより筋肉が柔らかくなるためです。具体的には血管の周りにある血管平滑筋という筋肉も ゆっくりとした反応しかしなくなります。妊娠していない時には頭の方向を急に変えるとき、この筋肉がすぐに収縮して脳に血液を保持するしくみあるのです が、妊娠中にはこのしくみがうまく働かないために脳貧血を起こしやすくなって突然倒れる事があります。一人っきりでの買い物などは避けましょう。いわゆる 妊娠貧血(血液の濃度が薄い)とは別の機序です。
-妊娠後期に仰向けで寝ると気分が悪くなるのはなぜですか?
妊娠後期に上を向いて寝ると気分が悪くなることがあります。これは、妊娠で大きくなった子宮が腹部の大静脈を圧迫して心臓に戻ってくる血液の量が減り、血 圧が下がることによって起こります。そのために気分が悪くなったときには左を下にして休むと良いでしょう。左を下にして休むと静脈の流れも改善して、心臓 に戻ってくる血液の量が回復しますので血圧が元に戻り回復します。
-妊婦はどんな体位で寝るのがよいのですか?
妊娠後期に死産について調べた最近の報告で、左を下にして寝ていたお母さんでは死産率が低下したとの事です。仰臥位低血圧と関係しているのかもしれません。できるなら妊娠後期には左下にして寝るのが良いかもしれませんね。