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産婦人科のエコノミークラス症候群

熊本地震では多くの患者さんがエコノミークラス症候群(血栓症)で命を落とすことになりました。最近の研究では地震や災害時の避難所で足を伸ばして寝ることができる簡易ベットの使用が、明らかにエコノミークラス症候群の発症を減少させることが明らかとなってきました。車中泊などでの長時間の無理な体勢が、血流の鬱滞を起こし血栓を形成します。何らかのきっかけでこの血栓が剥がれて肺に詰まってしまうために死に至ることがある病気です。血液検査で発症を予防することは難しく、その治療にも困難を極めることがあります。

 実は、妊娠という状態はこのエコノミークラス症候群が起こってもおかしくないプレエコノミークラス症候群とでも呼べるような状態にあるのです。胎盤が作り出すエストロゲンというホルモンは血液を固まり易くする作用があり、妊娠していない若年女性に比較すると12倍程度血栓症を起こしやすくなっています。また避妊目的で服用する経口避妊薬を服用している婦人では、高用量ピルでは6~10倍、低用量ピルでも3~4倍程度血栓症を起こし易くなっています。ちなみにピルによる血栓症が原因でこの5年間で日本では11人が死亡しています。

 帝王切開後の血栓症でも死亡することがありますから、現在では術後に下腿のマッサージポンプや凝固阻止剤や低分子ヘパリンなどの投与とともに早期離床が大変重要です。手術後24時間以内には歩行開始しましょう。

① 足が痛くてむくんできたり ② 胸が苦しくて息ができないとき ③ 目が見えにくいとき ④ 割れるようなひどい頭痛の時には、エコノミークラス症候群を起こしていることがあります。MRIやCTなどの検査ができて血栓症治療のできるような高度の救急病院を急いで受診してください。

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