-瘢痕部妊娠とは何ですか?
既往の帝王切開創部の瘢痕部筋層に根ついた(着床)異所性妊娠(子宮外妊娠)の事を帝王切開瘢痕部妊娠と一般には呼んでいますが、まだ正式には定義はされてはいません。
子宮下部横切開の帝王切開した術後3ヶ月以降に超音波検査にて観察した子宮の約50%に切開創の内膜欠損、筋層の菲薄化、および超音波検査での三角形の欠損像が認められ田との報告があります。この欠損部位に赤ちゃんの発生してくる袋(GS)が根つく事により瘢痕部妊娠が発症すると考えられています。
-瘢痕部妊娠が増加しているのはなぜですか?
帝王切開が世界的に増加してきているからです。先進国の帝王切開率は30年間で8%から25%と3倍にも増えており、日本でも病院での帝王切開率は25%程度です。いまでは帝王切開後の瘢痕部妊娠の発生頻度は2200例に1例程度と報告されています。また何回も繰り返す瘢痕部妊娠例も報告されています。
子宮外妊娠(異所性妊娠)の約5%前後を瘢痕部妊娠が占めるようになりました。
リスク因子としては子宮腺筋症、子宮内容除去術既往(中絶や流産手術)、胎盤用手剥離のあとなどがあげられています。既往の帝王切開の回数や帝王切開と次の妊娠の間隔などとの関係は現在のところ明らかにはなっていません。
-瘢痕部妊娠の診断は?
種々の画像診断検査(経腟超音波検査やMRI、CT、デジタルアンギオグラフィなど)が役に立ちますが、中でも経腟超音波検査で瘢痕部に豊富な血流が認められれば妊娠早期に診断が可能です。早期の診断ができなければ子宮破裂や大出血にいたり生命の危険につながることが多いのが現状です。
-瘢痕部妊娠の治療は?
瘢痕部妊娠部を摘出する手術的な方法や抗癌剤を使う治療、子宮動脈を止めてしまう塞栓術などいろいろな治療法がありますが、どの治療が優れているのか分かっていません。
帝王切開を受けたことのあるお母さんは、妊娠反応が陽性になったらできるだけ早めに産婦人科専門医を受診して正常妊娠であることを必ず確認しましょう。
仮に瘢痕部妊娠の疑いがある時には、大学病院などを紹介してもらえば診断と妊娠早期の適切な治療により命に関わる大きなリスクを避ける事ができます。