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PMSとPMDD?

PMS Premenstrual Syndrome、PMDD Premenstrual Dysphoric Disorderとは?

 生理前にイライラなどの症状が起きるのがPMS(月経前症候群)です。

PMSは生理前のホルモンバランスの乱れなどによって、イライラ、情緒不安定、憂うつ、頭痛、腹痛などの症状が現れる疾患です。典型的なPMSでは、生理の約1週間前から下腹部痛や頭痛、イライラ、憂うつ、日中の眠気、夜の不眠などの症状が始まり、生理の開始とともに軽くなっていきます。症状の現れ方や強さは人それぞれですが、女性の発症率は90%ともいわれています。

 それに比較して、より精神症状が強いのがPMDD (月経前不快気分障害)です。

PMDDは、生理前になると攻撃的になり、場合によっては自殺願望を抱いたり、自傷行為に走るなど、精神症状が強くあらわれてきます。また、PMSが生理の直前から始まるのに対して、生理の1週間前、時には2週間前から始まる事が多いようです。PMSと比べると症状の出現期間が長いのもPMDDの特徴です。医療機関では薬物療法、精神療法がおこなわれる事があります。PMSの症状は、ピルを飲むだけで軽快するヒトや生理が終わればおさまるヒトもいますが、PMDDの場合は、専門の医療機関にかかることが必要になってきます。
 
 PMSもPMDDも診断基準があり、2017年の産婦人科診療ガイドラインではPMSは米国産婦人科学会の診断基準に、PMDDは米国精神医学会の診断基準を用いることになっています。原因に関しては多くの説がありますが、いまだ不明です。セロトニンと言う脳内物質不足はうつ症状の原因となる事が分かっています。排卵を抑制するとPMSは発症しないので、排卵したら分泌される黄体ホルモンが、セロトニンを低下させてPMSが発症するのではないかと考えられています。

 PMDDの治療を行うのは産婦人科や精神科ですが、治療はセロトニンの減少を抑える抗うつ薬やピルとの併用による薬物療法が中心です。毎月、生理の始まる2週間前から生理が始まって症状が出なくなる時期まで抗うつ剤の服薬をする方法などがあります。

完治までの期間は、とても個人差が大きく一概には言えませんが、薬で症状を完全に抑えた状態を最低1年は続けるのが望ましいとされています。それでも効果がない場合には総合病院などの精神科専門医に相談することをお奨めしています。

 残念なことに、日本では経口避妊薬の使用に関してはPMS, PMDDの診断ではともに保険適応外なので自費診療となります。

 月経前の気分の落ち込みがひどく、仕事や勉学に支障を来すときには、一度、産婦人科医に相談してみてはいかがでしょうか

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