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葉酸とマルチビタミンによる神経管閉鎖障害と常位胎盤早期剥離の予防

妊娠初期に必要な栄養分として特に重要なのが、葉酸です。葉酸は、細胞分裂をおこなうDNA合成に必要な栄養素です。妊娠初期の赤ちゃんの細胞分裂が活発で脳や脊髄などの重要な器官が形成される時期には欠かすことのできない栄養素です。

この細胞分裂の際、葉酸が欠乏していると器官の形成がうまくいかず、特に、神経管閉鎖障害を起こし、二分脊椎や無脳児などの原因となることがあります。葉酸の適切な摂取は先天性奇形の神経管閉鎖障害のリスクを70%ほど減らせるという研究や巨赤芽球性貧血(悪性貧血)の予防になることもわかっています。

妊娠中は、鉄分不足による鉄欠乏性貧血のほか、葉酸不足による巨赤芽球性貧血も考えられるため、鉄分と葉酸の摂取は貧血の予防効果が見込まれます。

貧血症状への危険性は妊娠初期だけでなく妊娠中期・後期もありえるので、積極的に葉酸を摂るように心がけることが大切です。

さらに最近、ノルウェーからの報告では葉酸とマルチビタミンの両方の服用が、妊娠中に胎盤がはがれてしまい、胎児死亡や母体死亡の原因になることがある常位胎盤早期剥離(早剥)を予防することがわかってきました。葉酸とマルチビタミンサプリメントの両方を服用していた人では、早剥発症のリスク低下が認められました。葉酸および妊娠中の他のビタミン補給は、早剥の危険性の低下させることがわかってきました。早剥は胎児ばかりでなく、母体死亡さえ起こすことのある大変危険な疾患ですから、簡単な方法で予防できるbならば、是非。摂取したいものです。

厚労省では『妊娠中の葉酸摂取を推奨』しています。葉酸を摂取することで、臓器の『細胞増殖』が働き、胎盤の異常防止と供に『胎盤早期剥離の予防』にもなると記載されています。食事からは十分な葉酸の摂取が難しいことから、手軽に葉酸を摂取できるサプリメントを併用することが薦められています。

厚生労働省が認めた妊娠初期の、食品とサプリメントから摂取したい葉酸の量は食品から240㎍、葉酸サプリメントから400㎍です。上限摂取量は1,000㎍と定めています。葉酸を過剰摂取してしまうと、妊婦さんに食欲不振、吐き気、不眠症、むくみなどの副作用を引き起こします。1,000㎍を超えてしまわないようにしましょう。

マルチビタミンと葉酸のサプリメントは、産婦人科の 診療機関で購入可能です。
産科主治医に相談してみましょう。

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