性交を通じて感染する感染症(STD)は、増加の一途をたどっており、また感染の兆候があってもほとんど気づかれないことが多いのです。そのために感染が拡大しやすく、不妊の主要な原因の1つとなります。最近は、初交年齢の低下にともなって10代女性の感染率が大きく上昇しており、将来の不妊につながることが憂慮されています。
日本の教育関係の先生方が、性感染症に関する知識が不十分で、生徒に的確な指導ができていないことにも、大きな原因があるようです。
特に急増している「クラミジア感染症」は、炎症が卵管や子宮内膜、骨盤腹膜などに及んでいれば、卵管閉塞や骨盤内に癒着を招くことがあります。女性の場合は症状が乏しく、無自覚のうちに拡大して不妊の原因となります。卵管やその周囲の組織に癒着が起こっていれば、手術や体外受精による治療でないと、妊娠できないことがあります。
男性は約半数に排尿痛などの自覚症状が起こります。精巣周辺に炎症が広がれば陰嚢が腫れて不妊の原因となります。
また、淋菌によって起こる「淋菌感染症」は、精巣上体炎や子宮頸管炎などを引き起こし、これも男女双方にとって不妊の原因となります。感染時に、男性の約半数は排尿時の違和感や、尿道からの黄白色の分泌物などの症状が見られますが、女性の多くは無症状のため、治療の機会を逃してしまいがちです。特に最近では 抗生剤に耐性を持った淋菌が、世界で初めて京都の性風俗関係者から発見されています。
誰でもコンドームなしの性交を行えば、妊娠するかもしれないことを知ってはいますが、性感染症(STD)に感染するリスクが高く、そのために、将来妊娠しなくなるかもしれないという、最も大事なことを知りません。また、性感染症があれば、局所にリンパ球が集中し、そのリンパ球を介してエイズに感染しやすくなることも知っておきましょう。
治療によって、感染症は治癒したとしても、すでに傷んでしまった卵管などは治りません。早期の不妊治療が必要です。
感染の予防には、コンドームの着用が有効です。さらに、自分だけではなく、必ずパートナーもきちんと治療し、再感染を防ぐことが重要です。