女性が、妊娠や出産を経ても働き続けることが当たり前の時代にになってきました。また、少産少子化時代を迎え、女性が生涯経験する月経回数が以前に比べれば多くなってきています。
実は、生涯の月経回数が増えたことで、子宮内膜症など女性特有の疾病の発症率が増加する原因になっていると言われています。月経は女性に生まれた限り避けようがないものとして考えられてきましたが、最近の産婦人科医学の世界では「月経は必要のないもの」ということが常識になって来ています(もちろん、妊娠を望んでいないことが前提です。)。
月経とは、妊娠のために約28日間かけて、女性ホルモンの働きで子宮内膜が厚く、分泌しやすくなりますが、受精卵が子宮に着床しなかければ、この子宮内膜が剥がれ落ち、腟から排出される生理現象です。この月経を繰り返すことが、マイナスになることもあります。妊娠を望まないなら、排卵し子宮内膜を厚くし分泌する必要はないので、女性ホルモンをコントロールすることで、排卵を止め、子宮内膜の変化を抑制し、月経を止めたり、あったとしても軽くすむようになります。
女性ホルモンをコントロールする方法が、ピルの服用です。ピルで月経を止めてもほとんどの女性には影響がないことは、ピルの副作用改善もふくめ長い年月をかけて実証されてきました。そして今や、産婦人科医学界では月経が不要という考えは常識になりつつあります。しかし、日本では月経を強制的に止めることへの抵抗が根強く、いまだに普及率は周期性投与を含めても3%と、世界的に見ても圧倒的に低いのが現実です。
また日本では、女性も男性も「生理(月経)が当たり前」と考えている人がほとんどで、。日本でのピル服用者の多くは、月経痛を軽くすることや、月経周期を安定させることを目的にしています。一方、欧米では、QOLを向上させるために服用している人が多いのが特徴的です。
ピルを安心して使える薬と薦めるのには、ピルが長年の研究開発を経て、女性が使い始めてから数十年経過しているからです。
「月経の3大トラブルといえば、下腹部が痛む月経痛、経血量が多い過多月経、月経前のホルモンの変動によって起こる月経前症候群(PMS)です。対処法として、いずれにも効果が期待できるのが、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬、いわゆる低用量ピルです。服用により経血量も減り、子宮収縮による痛みも減ります。薬によって、ホルモンの変動も少なくなり、PMS(月経前緊張症候群)の症状も緩和されます。
この半世紀で女性の生き方は劇的に変わりました。今では結婚・出産を経ても社会で活躍している人が珍しくありません。そんなアクティブになったライフスタイルの中で、相変わらず女性の悩みの種となっているのが月経です。月経の辛さから解放されるためには月経を止めるのがいい。ピル服用が現代女性の“苦しみ”を解放する、現時点での最良の手段だということです。
唯一気をつけるべきは、服用開始から最初の3カ月に発症することが多い、「血栓症」(エコノミー症候群)です。日本人は、あまり発症する人も少ないとされていますが、異常を感じたら(足が痛く、腫れてて歩けない。目が見えにくい。いままで経験したことがないほどの頭痛。息ができない。胸が苦しい。)すぐに救急病院を受診し、血栓症の有無を確かめましょう。発症して3~4時間以内であれば、血栓を溶かしたり、カテーテルという管で血栓自体を除去できる治療法があります。