妊娠を中絶する目的で子宮内容除去をする手術を人工妊娠中絶と言います。
従来の子宮内の掻爬手術の方法では盲目的な手術のために危険な合併症が起こる事があります。最も多いのは子宮に穴があくことです。さらに、それに気がつかないまま腸管まで損傷し腹膜炎で死亡した例などが報告されています。
これらの悲惨な合併症を避ける当院で行っている安全な流産手術をご紹介いたします。当院では開業以来子宮穿孔(穴が開くこと)が起こったことは一度もありません。
人工妊娠中絶術では、元来は、子宮の入り口をヘガールという鉄製の棒状の器具を小さい物から大きなものまで順に使用して、だんだんと子宮の入り口を広げていきます。妊娠した子宮は柔らかくなっているので、この時に子宮に穴を開けてしまうことがあります。さらに、それに気がつかず、腸などの損傷まで起こした症例も報道されています。子宮自体は目で確認できないために、掻爬の手術経験が少ないとその可能性はありますが、経験のある医師でさえも思いがけず子宮に穴を開けることはあります。
この危険な合併症を避けるためにまず、子宮の入り口を開くときに3mm程度の大きさの棒状の親水性ポリマー等(ダイラソフト、ラミセルなど)を挿入します。この子宮頸管拡張法では、柔らかい素材なので子宮に穴を開けることはありません。
そして、掻爬手術ではなくて子宮の内容物を吸引する方法をとります。重要なことは超音波検査を腹部から併用しながら、吸引管の先端が子宮内のどこにあるのかTVモニターで確認しながら施行することです。この方法は手術時間が極めて短いために、使用する麻酔薬が少量ですみます。麻酔薬には呼吸抑制作用があるわけですから少ない量ほど安全です。短時間の手術は細菌感染の予防にもなります。また術直後の出血量も少なく数グラムの事がほとんどです。
最後に子宮の内容物の顕微鏡検査は大変重要です。残念なことにほとんどの先生は組織検査までしません。肉眼では異常がなくても、悪性疾患(絨毛性疾患)が潜んでいることがあるからです。また、子宮外妊娠を否定のためにも、子宮内の妊娠であった証拠として組織を確認する意味もあります。
手術後は、次回の避妊のために基礎体温をつけたり経口避妊薬の指導もいたします。
健康保険はききませんので注意しましょう。当院では妊娠11週6日までの中絶手術のみを行っています。