妊婦健診で行われている風疹の検査方法はHI法と言う検査方法でのみ決められています。32倍以上が陽性と判定します(このHI法での32倍の時は簡単に言えば32倍以上64倍未満を示していてます)。16倍をわゆる擬陽性として扱います。
男性は16倍以上でも陽性とします。男女とも8倍以下は陰性とします。女性も16倍以上で罹患発症はしないと考えられますが、妊娠中の胎児への感染を防ぎきれないという値と考えられていますので、妊娠中は少なくとも32倍以上を陽性としています。(もちろん32倍以上あれば絶対安全とは言い切れません。)
子供の場合は成人同様に16倍以上で発症予防可能ですから、16倍以上で陽性と判定します。16倍で理論上は予防できますが、32倍ならより安全と思われます。
異なる風疹検査法のELISA/IgGに置き換えると男性は6.0以上、妊娠可能女性は8.0とされているようですが、この数値はあくまで暫定的なものです。妊娠の安全を保証するものではありません。一般的な妊婦健診では使われていません。ELISA/IgGとはその程度の半定量的な数値と考えられます。
以上のように風疹の擬陽性とは、HI法で16倍と考えて説明しています。
2013年の風疹大流行がありましたので、当院では風疹HI価で陰性または擬陽性の人は産褥5日目と2ヶ月後にMRワクチンで接種してきました。その時のデータをまとめてみると1回の追加では25%が陰性でした。中には次の分娩後に接種しても陽転せずに抗体陰性人がいました。メカニズムは不明ですがワクチン接種後も風疹抗体価が上がりきらないおかあさんが一定数いるようです。
今後の風疹流行時の対応ですが、女性が陽転できない時は家族(ご主人・両親・子供・兄弟など)や職場などの本人に対して濃厚接触の考えられる人々を少なくとも16倍以上に高めておくことで、胎児への感染を予防できると考えられます。そして妊娠初期には人込みを避けるなどの対応しかないと思われます。
先天性風疹症候群から胎児を守るためには家族、同居人全員の協力が不可欠と考えられますから、家族等に対する積極的なカウンセリングも必要でしょう。