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月経困難症の治療

 月経困難症の生活指導としては、まず鎮痛薬を正しく使用することが一番です。月経困難症の原因として、プロスタグランジン(PG)による子宮筋の収縮による痛みや消化器症状、頭痛がみられます。したがってPGの産生を抑制する非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)が第一選択薬です。NSAIDsは内服から効果発現まで30分前後かかるため、疼痛出現前の内服が推奨されています。若年であっても月経開始前日からNSAIDsの内服を開始し、月経2~3日目まで定期内服をしてもよいとされています。

 月経痛にはホットパックやカイロなどによる下腹部の保温が効果的です。日常的に体を温めたり体を冷やさないようにすることは、現時点ではエビデンスはありません。また、適度な運動も効果があります。週3回1回45~60分の運動が有効と報告されています。エビデンスレベルは弱いのですが鍼灸やツボも効果があると報告されています。食事では、野菜や果実、魚や乳製品の積極的な摂取により月経痛が軽減し、ダイエットや不規則な食事習慣は月経痛を悪化させます。カナダや米国ではショウガの摂取も有効とされています。

 

月経困難症と仕事

 月経困難症の症状が重度の生理休暇について:
生理休暇は日本では1947年に制定され(米国にはありません。)、労働基準法で「生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」と定めています。生理休暇の取得に診断書の提出は不要で、数時間~半日単位で取得できます。休暇の日数や無給/有給の決まりはないため労使間での取り決めになります。月経困難症の人には、生理休暇の活用とともに、症状軽減や原因検索のため、是非、産婦人科受診をしましょう。

 

薬物治療

 器質性月経困難症においても、NSAIDs、低用量ピルは第一選択薬です。機能性月経困難症では、漢方も推奨されています。

 

▶ NSAIDs(非ステロイド系鎮痛剤)

 子宮内膜で産生されるPGを阻害し、疼痛改善効果が高いです。しかし、約18%の女性はNSAIDsを使用しても効果がないか乏しいことが報告されています。

▶ 低用量ピル(OC)

 卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲスチン)を含み、排卵を抑制し子宮内膜を薄くすることにより、出血量を減少し疼痛を改善します。月経痛を伴い月経困難症の診断となれば、低用量エストロゲン・プロゲステロン製剤(LEP)が保険適用になります。自費の避妊ピルも同様の効果があります。低用量ピルには血栓症のリスクがあり)、35歳以上で1日15本以上の喫煙者、前兆のある片頭痛では禁忌、軽症の高血圧や耐糖能異常、肥満症では慎重投与となっています。近年では欧米を中心に、低用量ピルの連続投与による月経回数自体を減らす連続投与法が推奨されています。

▶ 漢方薬

 こむら返りなど筋肉の痙攣に使用する芍薬甘草湯は疼痛時に頓用で使用します。当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸、温経湯などは通常は定期内服で使用されます。

 

 近年、若年層を含めた月経困難症の多くに、未診断の潜在性の子宮内膜症があることが報告されています。子宮内膜症を放置すると不妊症や慢性骨盤痛の原因となるため、適切な診断と治療が必要です。月経時期以外の骨盤痛、性交時痛などがあれば、産婦人科の早めの受診を考えましょう。

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